Column

専門医の育成

2023.04.25

矯正歯科を標榜している(看板に掲げている)開業医はつぎのように大別されます。一つは、大学卒業後に大学など学会指定研究機関において専門教育を受けて、矯正歯科だけで開業あるいは勤務している場合です。

一般的に〇〇矯正歯科クリニックなどの名称の歯科医院がそれです。もう一つは、学会指定研究機関での卒後専門教育は受けていないものの、講習会やセミナーなどで矯正歯科の研修を重ねて開業している場合です。
いわゆる矯正歯科専門医 (Orthodontist)とは前者の場合を指し、そのほとんどが日本矯正歯科学会などの認定医や臨床指導医の資格を取得しています。また、後者の場合は矯正歯科だけでなく一般歯科や小児歯科などと併称していることが多いです.

では、なぜ6年間もある歯学部の卒前教育だけで矯正歯科治療ができるようにならないのか不思議に思う方もいるでしょう。その理由は、卒前教育では他の課目とのバランスで、歯科矯正学の講義や実習時間を十分に獲得することができないため、学部卒業までに初歩的な診断や治療のスキルを身につけさせるのが精一杯で、本格的な教育は卒後教育に委ねられているからです。

卒後教育コースは、国が定めている大学院(4年制)とはまったく別で、各大学の歯科矯正学講座(名称は色々)が自主的に設けている私塾のような位置付けです。一般的には大学院生も含めて、すべての新入医局員がこの臨床研修を受ける仕組みになっています。
かなり厳しいカリキュラムの中で臨床と研究の研修を続け、臨床研修終了後も、大学病院や矯正歯科クリニックなどで臨床経験を積む場合が多いです。前に述べた日本矯正歯科学会の認定医の資格条件の中にも、歯科医師免許取得後、学会指定研修機関で5年以上の臨床経験を積んでいることが義務づけられています。

臨床指導医は認定医の資格と得てからさらに研鑽を積んでから取得が可能になるため、よりハードルの高い資格です。残念ながら、矯正歯科医(Orthodontist)が、このようにして養成されていることはあまり知られていません。