Column
菅原準二のコラム
アライナー矯正とその落とし穴
2023.04.25
アライナー矯正は透明のマウスピース型の着脱式の矯正装置で、とりわけインビザライン(商品名)は21世紀に入ってから世界中で急速に拡がりを見せている治療技術です。インビザラインはハイテク技術を駆使して作製される装置ですが、当初は必ずしも使い勝手の良いものではなく、わずかな凸凹歯など軽度の不正咬合の治療に止まっていました。
その頃、ワイヤー矯正のある著名なアメリカの先生から「装置はハイテクだが、使い方はローテクだ」などと揶揄されることもありました。しかし、その後は改良が重ねられて、現在ではワイヤー矯正と遜色のない治療に近づきつつあります。実際、昨年までに全世界で約1220万人がインビザラインで治療を受けるまでになりました。
インビザラインは1から10までデジタル技術を用いて作製されることから、ワイヤー矯正のように職人的技術を要求されることがありません。そのため、アライナー矯正には矯正歯科医に限らず、多くの一般歯科医も関わるようになりました。しかし、誤解を恐れずに言えば、矯正歯科についての専門的知識や経験がない歯科医はアライナー矯正を行うことは可能ではあっても、治療結果まで保証できる訳ではないことを知っておく必要があります。
これがアライナー矯正の落とし穴です。
専門的知識とスキルがなければ、治療が期待していない経過をたどったり、不測の事態が生じた場合にリカバリーすることが難しいからです。
ワイヤー矯正中心の矯正歯科医の中にはアライナー矯正を好ましく思っていない者もいますが、ワイヤー矯正とアライナー矯正は対立する治療法ではなく、より良い結果をもたらすための選択肢ととらえるべきでしょう。