Column

インプラント矯正

2023.04.25

21世紀に入って矯正治療において2つの革命が起こりました。一つはインプラント矯正で、もう一つはアライナー矯正です。今回は前者のインプラント矯正について触れます。
矯正治療とは歯に力を与えて目的の位置まで動かすことを意味します。その際、ニュートンの第三法則の作用・反作用にあるように、歯に力を与えれば必ず同じ強さの反作用を受けることから、それをしっかり受け止めるための固定源が必要になります。

比較的歯根表面積の小さな前歯を動かすだけであれば奥歯を固定源にすれば済むことですが、奥歯を動かす場合にはか弱い前歯を利用するわけには行きません。そのため、奥歯を動かす方法として、伝統的には頭部や頸部に固定源を求めるヘッドギアなど、人目にも付く大袈裟な装置を使わなければなりませんでした。しかも主な対象は子どもでした。

そこで登場したのがアンカープレートやアンカースクリューを顎骨に暫間的に取り付けて固定源にする方法、すなわちインプラント矯正です。私を含む東北大学チームが世界で初めて開発したのがアンカープレートです。
この方法は局所麻酔下で粘膜を切開して純チタン性のプレートを骨の表面に固定するもので、言わば従来のヘッドギアがすっぽりお口の中に収められたようなものです。強力な固定源として機能することから、上顎と下顎の奥歯の三次元的な移動が可能になりました。
これを利用することによって、下顎前突や上顎前突、そして開咬など、骨格に問題のあるケースを顎の手術をせずに改善できる範囲が広がりました。また、奥歯を後ろに動かすことによって小臼歯の抜歯を避けることができるケースも増えました。

アンカースクリューは粘膜を切開することなく、軽い局所麻酔下で粘膜や歯肉の上から骨に挿入するより簡便な方法です。私の場合、問題が複雑で難しい症例にはアンカープレートを適用し、比較的容易な症例にはアンカースクリューを用いるように使い分けをしています。患者さんの協力なしに、確実に治療ゴールを達成するためには、今や両者は不可欠の存在になっています。
インプラント矯正は治療ゴール達成の予測実現性を高めるために世界中で日常的に使われています。