Column

Master Clinicianに選ばれて

2025.07.03

世界で最も購読者数が多いと言われているアメリカの『Journal of Clinical Orthodontics(JCO)』において、私が”Master Clinician” (矯正歯科臨床の巨匠)に選出され、そのインタビュー記事が2025年4月号に13ページにわたり掲載されました。JCOは約60年の歴史を持つ学術誌ですが、この名誉を受けた臨床医は欧米人ばかりで、日本人としては私が初めてのことでした。

私がこの栄誉に輝いた理由は、私たちのチームが開発したSkeletal Anchorage SystemとSurgery Firstという革新的な治療法が、世界の矯正歯科臨床のパラダイムシフトを促すきっかけになったからからです。これらは、私が以前のコラムでも触れたとおり、世界に先駆けて導入したものであり、その結果、これまで欧米中心であった矯正歯科臨床の世界において、アジアにも目を向けさせ、情報を発信する役割を果たすことができました。

これらの研究と開発には、私をリーダーとする東北大学のチームが中心となりましたが、矯正歯科分野や口腔外科分野の先生方の協力なくしては成し得ませんでした。このため、”Master Clinician”という称号は、本来はチーム全体に授与されたものであり、私が代表して受け取ったものだと心から感じています。

子育てと同じく、臨床医も一人の力だけで成長できるわけではありません。優れたメンターとの出会いは、臨床人生において非常に重要です。インタビューでも触れましたが、私にとって幸運だったのは、伊藤学而教授(鹿児島大学名誉教授)、三谷英夫教授(東北大学名誉教授)、ラビンドラ・ナンダ教授(コネチカット大学名誉教授)といった、素晴らしい指導者たちと出会えたことです。これらの出会いがあったからこそ、私の臨床人生は支えられ、今回の”Master Clinician”受賞につながったのだと確信しています。

この栄誉は、私の臨床人生の中で最も大きな喜びであり、これまで一心に矯正歯科臨床に取り組んできたことへの最大の報酬だと感じています。この受賞を機に、今後も臨床に情熱を持ち続け、残る人生を全うしていく決意を新たにしています(感涙)。