Column

デジタル化の大波

2023.07.07

これまでのコラムでは、私の現在の診療環境が、四半世紀前の河北新報連載時と大きく変わっている点について触れてきました。その極めつけはデジタル化で、最近の言葉で言えばDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
デジタル化は突然起こったわけではなく、じわじわと浸透してきたことから、その変化をあまり意識することはありませんでした。しかし、改めて四半世紀前と比較することによって、その衝撃的な変化に気づかされます。とりわけ団塊の世代の私とっては、デジタル化の大波にのまれたような感があります。

いくつか具体例をあげてみます。まずは歯型取りについては、以前はアルジネート印象材というペーストを用いていましたが、現在は光学スキャナーでそれができるようになったことから、クライアントは吐きそうな苦しい思いをすることがなくなりました。また、光学スキャナー・データから3Dプリンターを用いて歯型をいつでも容易に作製することができるようになったため、石膏模型が不要になり、その収納スペースに苦労する必要もなくなりました。

次にX線写真です。以前は、一枚一枚をフィルムに現像していましたが、デジタル化が進み、フィルムレスになりました。加えて歯科用CTが開発され、普及が進むにつれて個人クリニックでも購入可能になり、歯や顎の精細な三次元画像診断ができるようになったことはまさに革命的な進歩です。
また、矯正歯科では診断や治療経過の評価のために、口腔内や顔面のスライド写真をたくさん撮影します。四半世紀前はアナログカメラであったため、フィルム現像を写真店にお願いしていました。出来映えは現像してみなければ分かりませんでした。
現在ではすべてデジタル化されてその場で出来映えがわかり、かつコンピュータで一括管理できるようになったことから、大量のスライドの収納問題から解放され、かつ著しくコストダウンになりました。これも革命的でした。

さらに、つい最近当院に導入したのが3Dフェイススキャナーです。
これを用いてワンショットで顔の三次元デジタル画像が撮影できるようになりました。それに歯型データや歯科用CTデータを組み込めることから、矯正治療のシミュレーションやアウトカム評価に大いに役立ちそうです。
そのほか、四半世紀前はクライアントの予約や個人情報管理を紙ベースで行っていましたが、現在では完全にデジタル化されたことによって予約の受付や変更業務が驚くほど簡単にできるようになったことも特筆すべき変革です。
しかし、DXは良いことばかりではありません。電子機器の導入には莫大な購入資金が必要となるからです(涙)。