Column

ガミースマイルの非外科的治療

2026.06.30

2026年6月4日に神戸市で開催された第34回日本成人矯正歯科学会学術大会において、「過大な口唇離開を伴うガミースマイルの非外科的および外科的治療」というタイトルで特別講演をさせていただきました。
このようなトピックを選んだ理由は、最近、ガミースマイルを気にして治療や再治療を希望する女性患者さんが増えているように思えたからです。

ガミースマイルとは、笑ったり話したりするときに上顎の歯肉が過剰に露出(3mm以上)する状態を指しています。
その原因は多様で、歯肉の腫脹、前歯の過剰萌出、上顎骨が垂直的に過大、上唇が短小、上唇の過剰な動きなどが挙げられていますが、単一の原因で症状を呈している場合もあれば、いくつかの原因が複合している場合など様々であることから、治療に際しては個別の対応が求められます。

従来、ガミースマイルは矯正治療だけでは良い結果を得ることが難しく、外科的矯正治療(顎矯正手術)によって上顎骨の一部をだるま落とし状に切り取って歯列全体を上に持ち上げる方法が最も確実とされてきました。しかし、21世紀になって、インプラント矯正(Skeletal anchorageやTADsとも称する)が開発されたことによって状況は一変しました。
すなわち、アンカープレートやアンカースクリューを上顎骨に一時的に取り付けて、それらを固定源に利用して歯を上方移動させることによって外科的治療に匹敵する結果をもたらすことが可能になったからです。
患者さんの症状に応じて上の前歯だけを圧下(上方移動)してガミースマイルを改善したり、あるいは前歯だけではなく奥歯も含めて上顎歯列全体を圧下させたりすることもできるようになりました。

ガミースマイル治療でとりわけ難しいのが再治療症例への対応です。典型的な事例を挙げれば、以前の矯正治療において小臼歯を抜歯して歯並びと噛み合わせはほとんど良くなったにもかかわらずガミースマイルが明らかに残っているような場合です。良い噛み合わせを保ったままガミースマイルだけを改善することは熟練矯正歯科医であっても至難の技だからです。
しかも、以前の治療で数年間を費やしている患者さんが多いことから、再治療をできるだけ短期間で終える必要があることも別の難題です。
しかし、このような難問を抱えた症例であっても、事前の矯正診断において適切な治療ゴールを設定し、アンカープレートやアンカースクリューを適宜組み合わせることによって、治療ゴールを予知的にかつ比較的短期間で達成できるような時代になりました。ただし、きわめて重度の骨格性ガミースマイルについては外科的治療が第一選択肢であることは、昔も今も変わりがありません。